子ども達のために大人がすべきこと 遊んで嬉しくなるために

シンポジウム「心と体を育む環境」に参加しようとしたら会場の入り口で皿回しセットを渡された。新手の販売かと思ったらそうではなく早川氏の講演で皿回しをすることになった。

正直、驚いた。

医師の集まる学会で参加者が皿回しをすることなどあり得ないからだ。初めは照れもあって控えめに参加していたが、だんだんと本気になっていった。まったくコツがつかめなくて上手く回らない。あっという間に時間が過ぎてしまい結局回すことはできなかった。

昔ながらの遊びは今の子ども達には結構、斬新に映ることがある。けん玉、ベーゴマは姿を変えてはいるが意外と人気だ。でも、この皿回しは斬新というよりは意外だ。もともと大道芸だと思っていたが遊びに取り入れてしまうとは。早川氏の発想は見事だ。

 さて、シンポジウムの最中から皿回しセットを購入して帰る気満々となり、1セットと早川氏の本を買って帰った。自宅に帰るなり、まず妻に見せたところすぐにはまった。何度も繰り返してやっと回せるようになって嬉しそうに私に見せてくる。高校生の息子は見つけるなり静かに黙々と集中していた。
高校生の娘にもさせてみた。娘は結構器用なので数回で回せるようになった。傍らで見ていてちょっと意地悪な気持ちになった。再現性はあるのか、棒から指に移せるか、空中に皿を放り上げてキャッチできるかなどと難問を出すが、ことごとくこなされてしまう。
でも、すごいな、うらやましいな、自分も上手くなりたいなというポジティブな気持ちだけが沸き上がった。なんだこんなもの、できなくたって生活に支障はない、ただの皿回しだろうといったネガティブな気持ちは不思議とわかなかった。

私も何度も練習し、娘からの助言もあって、初めて回すことができた。嬉しかった。思わず、妻に「回った、回った」と見せた。まだ、再現性は低いがそれでも回った時はけっこう嬉しい。
遊ぶという行為そのものだけではなくて、誰かと関わりながら成果を見せ合ったり、何かが達成できたとき「嬉しい」と感じるのだろうと思った。
いい大人がと言われるかもしれないが、大人だって嬉しいものは嬉しい。
逆に嬉しいと思える機会がそうそうはないのではないだろうか。

私は、2010年に「子どもとメディア北海道」を立ち上げて電子メディアが子どもに与える影響について啓発活動を行っている。
子どもたちにとって体を使い、五感を使った遊びは運動機能だけではなく情緒面の発達にも大切である。しかし、今の子どもたちは遊びといえばスマートフォンやゲーム機での遊びがメインとなっている。友達の家に遊びに行ってもみんなでゲーム、公園でも日陰でゲーム。体を使わないから楽だし、ゲームは魅力的だからやっていても飽きない。
よく、テレビ、ゲームやスマートフォンを控えて体を使って遊びましょうと大人は言うが、ではどこで、どのようにして遊べばいいのだろう。そう言う大人だって子ども達に遊びを教えられないし、一緒に遊べない人が増えているのではないだろうか。

アウトメディア(電子メディアに接触する時間を減らすこと)を進めるためには、大人が遊びの環境や機会を積極的に創りだすこと、そして子どもと一緒に本気で楽しむことが必要だ。そうでなければ大人も子も「遊んで嬉しかった」とはならないだろう。
そのためには大人が遊びの楽しさを知らなければいけない。それが早川氏の言う「「遊ぶ環境」作りはまず身近な大人が遊ぶことから」なのだろうと感じた。
早川氏の講演を拝聴できてよかったです。私自身が何をしていくべきなのかのヒントをいただきました。ありがとうございます。これからも医師たちに皿回しを広げてください。

旭川赤十字病院 小児科
諏訪 清隆先生