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Takashi Hayakawa

映画 「新聞記者」を観る

松坂桃李の「涙」の意味から、大人の「責任」として「今」何をすべきかを考える 7月12日に金沢の映画館で「新聞記者」を観た。映画2017好きの長女の勧めで。 「凄かった!今の政権の暗部をリアルに描いてあって凄かった。お父さんの知ってる寺脇 研さんもでていた。とのことだった。

この映画は東京新聞・望月塑子記者執筆したの「新聞記者」 (角川新書)を原案にして、 「内閣官房」と「女性記者」との国民の「知る権利」を「権力とメディア」 「組織と個人」 のせめぎ合い描く。「東都新聞」の新鋭吉岡エリカ(シム・ウンギヨン)と権力側(内閣 情報調査室)で現政権を維持するための世論コントロールする仕事に携わる杉原拓海(松 坂桃李)の二人の人生が交差する中で、衝撃の事実が浮かび上がる。吉岡はジャーナリス トの父は「誤報」の責任を取らせれて自殺したという人生を背負い、杉原は尊敬する元上 司神崎(内閣府官僚)が自死に衝撃を受ける。二人を結びつけたのは、東都新聞社会部に 送られてきた「医療系大学新設」に関す極秘公文書だ。この公文書に潜む内閣による人類 を脅かす「陰謀」。さながら、2017年に起きた「かけ学園」疑惑以上のサスペンスだ。

杉原拓海は、権力によって封じられようとした偽装事件に吉岡新聞記者と共に真相を抉 り出していく。「権力側」である「立場」の上司から大きな圧力の受ける。 そのような状況の中での上司の自殺、そして、事件が解明されていくラストシーン。難 産の末の我が子が誕生する。杉原は、妻から赤ちゃんを受け取り抱きしめ、ほろほろと涙 を流す。妻(本田翼)は、子どもを抱きしめ、涙を流し続ける夫を両手で包み込む。そし て、泣き止まない夫の背中を赤ん坊をあやすように、手のひらで「とんとん」とやさしく たたく。松坂は泣きながら妻の肩に顔を沈める。このシーンで松坂が見せた演技は圧巻だ。 私はこの「涙」をどのように感じるかが、私にとってこの映画の真骨頂だと思えたのだ。 「涙」は生まれたばっかりの命のかたまりのような我が子の存在を感じ、我が子の誕生の 喜びの感情から流される。

そこから、「この子が生きる未来に『嘘』や『欺瞞』に満ちた世界を今を生きる大人た ちが許していいわけがない。自分は今何を?」といった葛藤から、更なる「涙」を誘発し たに違いないと思うのだ。そして、このシーンが私たちに何を問いかけているのかを感じ る、考える、ことこそが、この映画の存在価値だと考える。勿論、この映画は「現代社会 にリンクする社会派エンターテイメント」として脚光を浴びている。「今の社会は、こう なんだ!」とリアルに知ったところで、私たちは変わらない。今、私たちは、「知る」だ けではなく、「感じる」ことから、変わるのだと思う。 杉沢の「涙」の訳は父親となって抱いた感情からだけではなかろう。官僚として自分が こなしてきたの仕事への思い、家族を持ち妻とのこれからの生活への思い、理不尽な自殺 を強いられた先輩への思い、湧き上がる様々な思いが、止まぬ「涙」の訳なのだろう。人 は、一人でありながら、多くの「役」や「立場」や「関係」の中に存在(い)る。 そして、杉原が口を開け呆然とした表情で町を歩く、それを追いかけるように走る吉岡 記者を描き、映画は幕を閉じる。 松坂は映画のパンフレットの「コメント」でこう述べ ている。「内側からにじんでしまう人としての自然な感情を大切に演じた」と。 杉原は何を考え、どう行動するかは観た私たちに委ねられる。

さて、今、参議院選挙のまっただ中。私たちは意識しているか、していないかは別にし て、「政治」に左右され、「社会」の中で生きている。私は子どもの遊び環境を考え、活 動することを仕事にしている。私はフランスの歴史人口学者・家族人類学者であるエマニ ュエル・トッド氏の警告「子どもを大切に育てない社会はいずれ崩壊する」(東京新聞で の対談記事)ことあるごとに思い出す。氏は「乳幼児の死亡率の異常な高さ」から、ロシ アの崩壊を予言した人物だ。 私たちは、すべてのことを考え行動するとき、「子ども」 に取って大切かどうか、子どもに未来に「責任」をとれているかどうかを意識しなければ いけない。エマニュエル・トッド氏が教えてくれた。 この映画は、大人たちに、 「私は、どのような社会を子どもたちに残そうとしているの? そのために何ができるの?」と問うているのだろう。



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